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さいたまユース設立秘話

2021年6月9日

設立当初の拠点はさいたま市浦和区の小さなアパートでした。

6畳一間にトイレ、バス、ロフト付き。そんな狭いアパートでしたが10人もいると座れなくなるほどで、わいわいがやがやにぎやかな拠点でした。ロフトがあったので毎日、学生ボランティアの誰かが泊まっていましたーーーー。

(この記事は代表 青砥へのインタビューを元に作成しています)

はじまりは居場所から

さいたまユースサポートネットを設立したのは2011年です。始まりは「たまり場」という若者たちの居場所づくり活動でした。私は元は高校教師で長いボランティア経験があって、10代からホームレス、親がいない、虐待を受けていた子など孤立無援で学校経験がない子どもたちにたくさん出会ってきました。自殺未遂を繰り返していた子、外国にルーツを持ち日本語が出来ず仲間がいない子たちにも会いました。

この子たちはこれからどうなってしまうのだろう

そんな想いが居場所づくりにつながりました。

貧困と学習支援の歴史的背景

日本では庶民の教育運動は活発に行われており寺子屋はよく知られていました。私の先祖も山陰の田舎でやっていたようです。19世紀にイギリスで発祥したセツルメント運動は20世紀になって日本にも伝わり、京都、大阪、横浜、川崎、東京などで教育学部生、医学生、法律を学ぶ学生等によって行われていました。スラムなどにつくられた隣保館運動等、庶民の貧困と学習支援は古い歴史があります。ただ、学習支援といっても反貧困活動でしたので、生活全般の支援のなかで、教育の機会を持たなかった親たちに代わって、子どもたちへの学びと遊びの一環でした。

戦後、日本社会ではバブルの崩壊以降、80年代から90年代にかけて貧困と格差が拡大進行していきます。東京の江戸川区では区役所のケースワーカーがボランティアで学習支援をしています。さいたま市でも大宮区でケースワーカーの人たちによって学習支援教室が開かれていました。

埼玉県の学習支援活動が始まったのは2010年のことです。全国で最初の自治体による学習支援になります。私に事業づくりと運営に対する依頼があり、事業計画とスタッフ集めから、お手伝いすることになりました。福祉担当部局が所管でしたので、当然ですが、生活保護世帯中心で福祉色の強い事業になりました。ただ、当時は、生活保護世帯の高校進学率は80%台でしたので、高校進学を保障する活動になりました。

たまり場から学習支援へ

2011年にはさいたま市で学習支援を始めることになりました。当時、埼玉大学で教えていましたので、埼玉大学の友人や学生たち、研究者、ボランティアの仲間(一般市民)の協力を得て事業はスタートしました。

無料で勉強できる。仲間ができる。

必要な子どもたちに声を届けるために

大宮の飲食店街で学生たちとチラシを配ったことがあります。無謀でしたね、女子学生はそんなことはさせてはいけませんね。この方針は直ぐに辞めました。ただチラシをまくというだけではなく、キャバクラで働くお母さんにも話していましたから。その周りには色々な人がいますから。あとから考えたらこわい。

日本語学校でチラシを配ったらたくさんの外国人の若者がやってきました。友達が欲しかったんでしょうね。日本語をボランティアが教えました。

それから公立の通信高校です。ただで勉強が出来る。仲間が出来る。通信の生徒たちにとっては最高の場所だったと思います。驚くような人生体験をしてきた若者たちもいました。家族がバラバラになって一人ぼっちになったり、自殺未遂を繰り返していた女性などもいました。

ユースのボランティアやスタッフ

民間企業で働きながらボランティアをして寄付もしていただいている友人は、今も法人の監事をしていただいており30年来のお付き合いです。地域の学習会や地域の子育てを語る会を一緒に始めた親の一人。地域作りをした仲間ですね。自動車産業のエンジニアで数学が強く、教え方が本当にお上手です。

経験が役に立つ

高校教師のころからの教え子もいました。この活動をして社会福祉士やスクールソーシャルワーカー、ケースワーカーになった人、卒業後の進路は様々で、今、常勤職でユースで働いていただいている人、メディアの記者になった人、研究者を目指している人、行政、教員になった人は多いです。3、4年もユースでボランティアをして実力を付けているので、教師になっても学校の中心的な存在になっています。社会が見えてますね。子どもの貧困問題もわかっている。だから教師になっても生徒がどの様な環境でどのような人生を歩んできたか分かっている。教師になる前にこのような経験が必要でしょうね。

活動する中でどのように仲間をつくるか。子どもたちの状況を話し合い、論議の進め方、論点の整理等が経験として身に付き大きな力となります。

出会った子どもたちに想うこと

10年前に来ていた若者たちの顔を思い出します。途中でいなくなった子もいます。
今どうしているかなと思います。仲間みたいな子達です。
幸せになっていて欲しいですね。

昔、ユースのたまり場でいろんな人たちに出会ったこと、思い出してもらえれば生きていく上で役に立つのではと思います。楽しいことを思い出せば、にこっと微笑むことができる、そんな体験です。

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