特別連載企画 バルセロナ通信(ヨーロッパの金融機関の投資でガザの子どもたちが死んでいる)
バルセロナに本拠を置くCentre Delàs の報告により、スペイン国内の約12の金融機関がイスラエルに武器・弾薬を供給する7つの企業に対し融資や資金投資をしていることが明らかになった。大半の取引は過去5年間に行われたもので、その総額は41億8870万ドル(約6282億円)にのぼる。これらの金融機関からの資金提供を受けた企業がイスラエルに販売した爆弾や武器、ヘリコプターやシステムを使い、イスラエルはガザや他の地域での多数の作戦を実行している。
2023年10月7日のハマスによるイスラエル市民への攻撃により約1200人が死亡し、200人以上の市民が誘拐された。その後に始まったイスラエルの攻撃により、この1年間でガザ住民1人当たり35キロにも相当する約70,000トンの爆弾を投下し、4万人以上が死亡し、すべての大学及びほぼすべての病院やガザ地区における基本的インフラを破壊し、ガザの人口の90%が少なくとも1回は強制的な避難を余儀なくされている。
ガザへのイスラエルによる攻撃開始から1年を迎え、戦闘停止の大規模なデモがヨーロッパ各地で行われた10月初頭、フランスのマクロン大統領はイスラエルへの武器提供を停止し政治的な問題解決の必要性を求める声明を出した。マクロン大統領の声明はガザ紛争に対する国内世論だけでなく国際的な懸念の高まりを反映するものであり、EUをはじめとする西側諸国へのイスラエルへの武器輸出政策において重要な変化をもたらす可能性を含むものである。
しかし、ガザ戦争に関するEU諸国の足並みは揃わず、アメリカやEUが支持する「自衛権行使」によるイスラエルの攻撃を止めることはでないどころか、イスラエルに対する商業的・外交的措置は取られていない。ウクライナ戦争に強調される「国際法遵守」「人権」という言葉は破壊されつくしたガザにおいては重みをもたず、国際社会の二重基準をますます明らかにしている。
マクロン大統領はイスラエルへの武器提供停止を求める声明の中でフランスがイスラエルへ直接的武器提供をしていないことを表明し、また、スペインや一部の国はイスラエルとの新しい軍需契約の締結を凍結している。しかし、直接的な武器提供の停止がイスラエルへの軍事行動への間接的な経済的「支援」を停止するものではないことは明白である。戦争が利益を生むものであるのはウクライナ戦争でもガザ戦争でも同じである。
欧州委員会フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長はイスラエルによる攻撃開始直後にイスラエルに対し「無条件」の支持を表明し、その後、数週間後まで国際法について語ることはなかった。ジョセップ・ボレル欧州委員会副委員長は同時期に次のように演説を行っている。「イスラエルで人生を祝っていた若者たちを殺すことは忌まわしい悲劇だと言えるように、ガザで800人(当時 現在は1万5千人)もの子供たちが殺されることについても悲劇だと言えないだろうか。一つの悲劇を嘆くことで他の悲劇を嘆く力が失われるということはない。むしろ、それを強めるのである」。
ガザ戦争開始から1年目を迎える10月初頭、ボレルは次のように述べた。「ガザの廃墟の下には何万もの人だけではなく、国際人道法も埋もれている。これは、私たちが義務を履行しないことの生々しい証拠であり、私たちはこれを守る力を持っていない」。
今年のノーベル平和賞に日本被団協が選ばれた。日本は唯一の被爆国として原爆の残酷さや戦争の悲惨さを訴える。しかし、私たちは家を破壊され、家族を殺され、明日は自分が殺されるかもしれない現状に置かれている人々、とりわけ無力な子供たちの声を聴こうとしているだろうか。ガザ戦争が「対岸の火事」であれば、日本も誰かにとって「対岸」となりうる。
(参考記事)
https://www.publico.es/internacional/ano-connivencia-ue-masacre-israeli-gaza.html
https://www.publico.es/internacional/bancos-espanoles-han-financiado-4188-millones-dolares-produccion-armamento-genocidio-gaza.html