あおちゃんのブログ(8月号)
①埼玉新聞「月曜放談」から(2024.7.8) 高校中退研究から地域のコモンズ形成へ
私は県内の高校に20年勤務した後、大学で仕事をしながら2011年、孤立した若者たちの学び直しと交流が内容の居場所づくりを始めました。きっかけは私自身の高校中退者の貧困と孤立調査でした。高校教師時代の1990年代から2000年代にかけ、埼玉県を中心に、東京、大阪など大都市圏の「高校中退」の実態を調査しました。埼玉県では1990年ごろには140校ほどの公立高校がありましたが高校ごとの中退数(入学時の生徒数-卒業時の生徒数)を調べると、入学者の半数ほどの生徒が中退する高校は10校、2割以上生徒が中退する高校は全公立校の30%でした。もちろん中退者ゼロの高校もありました。入学者の半数が中退する高校の入学試験(国数英社理)では数学や英語はかなりの生徒がほぼ零点、逆に中退者ゼロ高校では入学試験の点数は全教科がほぼ満点でなければ合格できません。さらに中退者の多い高校グループでは最低でも2割を超える生徒が授業料の減額か免除を受け、中退者の少ない高校グループでは減額免除の生徒は前者の10分の1以下でした。最近、埼玉県内の公立高校で共学化に反対する生徒や同窓会の動きがありますが、ほとんどは中退者がいない「進学校」と呼ばれる高校です。高校間には学力だけでなく、家庭の経済力にも大きな格差がありました。さらに中退理由を聞くと、多くが「人間関係がつらい」と話しました。生徒の友達づくりだけでなく、教員との関係性もできていませんでした。そんな高校では、高校生活の主要なイベントである文化祭は土日の2日間開催から、外部からのお客もなく1日になり、中には開催自体が困難になる高校もありました。中退者の多くは入学した高校に友人や居場所を作ることもなく、1年生の夏休み明けから休みはじめ、1年の学年末に退学していきました。そんな若者たちを対象にしたボランティア活動が今では、居場所、学習支援、就労支援というより働く力、社会とつながる力を育てようという活動など、毎週1500人ほどの子どもや若者たちが参加する活動に広がりました。地域のつながりも自治体にとどまらず、自治会、民生委員、社会福祉協議会などの住民組織、学校、ロータリークラブなど企業も参加した、子ども・若者支援の協働の活動に発展しました。「公助」の縮小が懸念される日本社会で、地域の支え合いをコ-ディネートするNPOの存在と地域に根ざす企業などとの協働による「共助」が必要になってきています。それを「地域の共有財」(ローカル・コモンズ)にしていく活動をモデルとし、まず県内から全国に広げたい、私はそう考えています。