「創立14年 子どもたちの歌声が」
「ユースに通えてよかった!」「スタッフに会えてよかった!」「この場に出会えてよかった!」長く居場所を利用する若者の言葉です。今、この若者は「さいたまユース少年少女合唱団」のメンバーのひとりです。
10月末、私たちは、「地域の子ども・若者たちとともに-さいたまユースの14 年」というイベントを開きました。集会には、地元の見沼区を中心に100人を超える市民が参加しました。基調講演で放送大学の宮本みち子名誉教授は日本の子ども若者政策の現状や課題を話しながら、さいたまユースの14年間の活動を見て、さいたまユースが地域の多様なニーズを掘り起こし、若者たちを中心にした居場所や学習支援の実践から、地域住民や住民組織が参加したコモンズに発展しつつあることに感慨を抱きながら語りました。2部は、不登校など生きづらさを抱え、さいたまユースの居場所に通う小学校1年生から19歳までの子ども若者たちの歌声が会場に響き、参加した大人たちの心を揺さぶりました。3部は清水勇人さいたま市長が自らの生い立ちから、さいたま市の子ども若者政策の大切さを語りました。
「さいたまユース」の設立の背景には1年で10数万人も高校を中退するという厳しい現実と「貧困と格差、孤立」の拡大がありました。私自身、1983年に埼玉県内の新設校に新任教員として赴任し、そんな現実を日々見てきました。高校教育とは何か、地域と学校の連携、職業(専門学科)教育の意味、教員と親の協働などを学びました。退職後の2011年、さいたまユース設立と同時に「たまり場」と名付けた若者たちの居場所活動がスタートしました。たまり場を利用した若者たちの多くは貧困、障がい、家族の崩壊、虐待・ネグレクトを体験し、児童養護施設など、社会的養護を受けてきた子ども若者やその家族、そして外国人の若者たちでした。多くは社会で孤立して生きる子どもや若者でした。「たまり場」は毎週土曜日に開催され、早期に学校から離れた若者たちのコミュニティづくりと彼らを社会につなぐ活動に徐々に発展していきました。その後、私たちの活動は「居場所・学習支援」から、孤立した子ども・家族を支える地域のプラットフォーム(ハブ拠点)としての活動に変化していきました。10月27日のイベントにも地域の自治活動、住民組織で活動する多くの市民が参加し、住民が主体となって運営・管理に関わる「ローカル・コモンズ」の形成も呼びかけられました。